咳外来

「先生、”せき” だけが止まらないのです」「咳が辛くて・・」 私は、大学病院、呼吸器専門病院、呼吸器専門クリニックで、非常に多くの咳で苦しむ患者さんを診療してきました。私の勤務してきた病院は、一般の呼吸器クリニック、病院でも改善できなかった咳で苦しむ患者さんが、数多く紹介され、診察してきました。ですので、咳の診断、治療に対しては非常に多くの経験を持っています。 また、私自身も咳喘息の持病を持っており、吸入薬の使用をしています。そのような経験を生かし、咳で困っている患者さんのお役に立てればと思い、咳外来を行なっています。 咳はなぜでるの? 咳は、気道の中にある分泌物などを外に出すための防御反応でもあります。肺の中、喉などの受容体と呼ばれる部位からの刺激が脳に行き、咳が誘発されます。咳の受容体は、外耳、食道にもあるため、耳掃除や、逆流性食道炎があると咳がでることがあります。 咳の分類 咳は、「持続時間」と「痰の有無」によって分けることが多いです。 それは、なぜでしょうか? 咳が出始めたばかりは、感染症(バイ菌による反応)による咳が多くなります。 咳が続く期間が長くなるにつれて、感染症以外の咳の割合が増えてきます。 また、色がついた痰と共に咳が出る場合も感染症の可能性が高くなります。 感染症かそれ以外、を判断することが重要なのですね。詳細な問診により、原因を絞り込んで行きます。 咳の原因 • 感染症 咳が出始めてから1週間以内は感染症のことが多く、痰を伴うこともあります。 多くはウィルス感染症であり、発熱、鼻水、鼻詰まり、喉が痛いなどのかぜ症状を伴うことが多いです。発症してから、3−5日目が咳のピークで、10日目くらいになるころには、80%はおさまってきます。 そのほか、マイコプラズマ感染症、百日咳などの症状の場合もあります。 • 感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽) かぜの症状はよくなったのに、咳だけが続くことがあり、感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽)という病態が知られています。 空気の通り道である気管支を覆っている細胞が、ウィルスなどによりダメージを受け、炎症がおこり、咳が起こりやすい状態(咳の知覚過敏)が続きます。咳喘息などの、他の咳との区別が難しいこともあります。 • 咳喘息/気管支喘息 • 後鼻漏(咽頭炎、鼻炎、副鼻腔炎)症候群 鼻水が後ろに垂れ込んで、炎症が起こり、咳が出やすくなります。 鼻水がないと感じている方もいらっしゃいますが、実際に咳の原因となっていることが多く見られます。 鼻水がのどに落ちる感じがする、のどがゴロゴロして咳がからむ、咳払い、などが症状です。 副鼻腔炎、蓄膿があるかたもいらっしゃいます。 • アトピー咳嗽/喉頭アレルギー • 逆流性食道炎 • COPD その他 稀な肺炎、肺癌、薬の副作用、結核など 検査 胸部X線検査を行うことが多いです。これは、明らかな肺癌、肺炎などを見落とさないためです。 感染症が疑われる場合は、炎症反応を血液検査で調べます。マイコプラズマ感染症、百日咳などを追加して調べることもあります。 咳喘息、気管支喘息などが疑われる場合は、次の検査を行う場合があります。 アレルギー性の炎症反応を評価する「呼気一酸化窒素(NO)分析」 気管支のせまさを評価する「気道抵抗性試験(モストグラフ)」「スパイロメトリー」 アレルギー素因を確認する血液検査(IgE抗体) 喘息が疑われる時の検査 治療 それぞれの疾患に合わせた治療を行います。 感染症であれば、適切な抗生剤、咳喘息/喘息であれば、吸入薬などの薬剤で、何らかの良い反応が出ることが多いです。