多くの形の異なるグラスの中から、飲みものの個性を最大限に引き出すボウル形状を、テイスティングを繰り返すことで探し出していくプロセスです。 これは、好き嫌いではなく嗅覚と味覚だけを使い飲み物のティピシエ(特徴)を見極めることが非常に大切です。 そのため、飲みものの造り手やスペシャリストによるテイスティングを行っています。 また、より適したものを選んでいくのではなく“消去法”をとることで、より公正で正確なデータを得ることができるのです。 グラスの形状の開発におけるリーデル社の信念は、「デザインの発想は製図版の上で生まれるのではなく、世界中の偉大な舌を持つ人々の協力のもとに、試行錯誤を繰り返し形作られていく」というものです。 香りの善し悪しやその強さは、ワインの個性ばかりでなくワインとグラス形状との相性によっても決まります。 また、一定の幅の温度でのみ香りは本来の広がりをもたらします。低い温度だと香りが弱められ、一方、高い温度ではアルコールばかりが強調されます。 グラスの形が本来の機能を発揮するためには、ワインが適切な温度で、適切な量注がれることが重要です。(白ワイン約90cc、赤ワイン約120~150cc)。 ワインは注がれるとただちに蒸発し始め、香りはその密度や重さに応じ幾層にもグラスの中を満たしていきます。 したがって、グラスの大きさと形状はブドウ品種の典型的なアロマに合わせて調整されるべきなのです。 最も軽く弱いアロマは花や果実の残り香で、これらの香りはグラスの縁まで立ち昇ります。 また、青っぽい植物的な香りや土っぽいミネラルの要素はグラスの中間を満たします。 木やアルコールなどの最も重いアロマは、グラスの底に留まります。 様々なアロマはグラスを回すことでさらに蒸発し、集中度が高まります。しかし、異なる香りの要素が互いに混ざり合うことはありません。ですから、同じワインでも、あるグラスでは果実の香りがしたり、別のグラスでは青い植物的な香りがしたりするのです。 全てのグラスで同じブーケを感じるためには、グラスを縦にシェイクするように激しく振らなければなりません。 そうすれば、一時、どんなグラスの中でも香りが混じり合い、同じブーケを感じることが出来るかもしれません。 ブラインド・テイスティングの際、経験豊富なテイスターは、サンプルの生産地やブドウ品種を特定するのに、自分の舌よりも嗅覚を頼りにします。 容量が750ccを超えるような非常に大きなグラスなら鼻をすっぽりと覆うことができ、ブーケの層を通して様々な香りを識別することが容易になります。 表面の果実の層から底部の土っぽい香りやアルコールの香りまで様々な香りを嗅ぐことができるのです。 味の好みは人により様々です。 個人の嗜好を超越した厳格なルールを押し付けることを誰にもできません。しかし、なんらかの大切なガイドラインを示すことはできます。 私たちの提案に対するワイン愛好家の反応は、長年にわたって圧倒的に肯定的です。 人は日常生活の中で、頭や手足を無意識のうちに動かしています。グラスでワインを飲むときも例外ではありません。 グラスの形状によって、ワインをこぼさないように頭は自然に傾けられます。口のひろがったグラスでワインを飲もうとすると頭は前方に傾き、一方口のすぼまったグラスで飲むときは、液体を流し込もうとして頭は後方に預けられます。 この働きが、ワインを舌の異なる「味覚ゾーン」へと導くのです。 フレーバーは、飲み物を口に含んだ後でしか感じられないものですから、喉の渇きを癒すためにゴクゴクと飲み干したのではグラスの持つ効果は台無しになってしまいます。 アルコール飲料は度数の強さに応じて、少しずつ口に含まなければなりません。 そうすることで、飲み物の流れはコントロールされはっきりとした第一印象が残ります。 多くの場合、甘い果実のフレーバーよりも酸味の要素が舌を覆ってしまうと、私たちはがっかりしてしまいます。こうしたことが起こると、グラスの形状が不適切であったことよりもワインそのもののせいにしがちです。これはまさに、ワインのメッセージを誤って伝えてしまった例なのです。 あらゆるワインがそれぞれ固有の品質を合わせ持っています。ブドウ品種や栽培された気候や土壌に基づいた、果実味、酸味、ミネラル、タンニン、アルコールなどです。 リーデル社のグラスはこの個性を存分に引き出せるよう、ワインを鼻孔や口中へと導くことができます。 グラスはワインの印象を決定する大きな役割を担っており、それはボウル部分のデザインが大きく影響しているのです。